世界の音楽シーンにクールな衝撃を与えたシャーデーのデビュー・アルバム「Diamond Life(ダイヤモンド・ライフ)」。1984年に発表されたこの作品は、ブラック・ミュージックのエッセンスがほとばしるソフィスティケイトされた楽曲に、その最大の魅力である包容力あるヴォーカルがコラージュされ、クールでありながら温かみのある、最高に洗練された仕上がり。「スムース・オペレーター」がヒットし、グラミー賞最優秀新人賞を獲得した。アルバム最高位は全米5位/全英2位。意外なことに、当初このアルバムはアメリカ盤で発売されておらず、アメリカではイギリスからの輸入盤しか入手できなかった。
デビュー・アルバム「Diamond Life(ダイヤモンド・ライフ)」
1985年に発表したセカンド・アルバム「PROMISE(プロミス)」では、スパニッシュの色彩を取り入れてフレッシュな仕上がりとなった。プロデュースをロビン・ミラーが手がけるなど、話題性の高かった作品。セカンド・アルバムからは、アメリカでも発売されるようになり、本作は、全米・全英共に、アルバムチャート1位を記録する大ヒットとなり、「The Sweetest Taboo」の大ヒットもあって、この年のグラミー賞の最優秀新人賞も獲得、世界的名声も得る事となった。
1988年に発表したサード・アルバム「Stronger Than Pride(ストロンガー・ザン・プライド)」では、バハマのナッソーのコンパス・ポイント・スタジオ、南フランスのミラヴァル・スタジオ、パリのマルカデ・スタジオと、あまりジャーナリストが押しかけないひっそりとしたスタジオで1年近い時間をかけてレコーディングされた、リラックス・ムード漂う作品。このアルバムからはセルフ・プロデュースで製作するようになり、このあたりから、「シャーデー・サウンド」とも言われるようになった。セールス面でも全英で最高3位、全米でも同7位とまたしてもスマッシュ・ヒットを記録するが、予定されていたワールド・ツアーも行なわれず、シャーデーは以後、長い充電期間に入る事となった。
サード・アルバム「Stronger Than Pride(ストロンガー・ザン・プライド)」
1992年に発表した通算4枚目のアルバム「love deluxe(ラブ・デラックス)」は、サード・アルバム以来4年ぶりにリリースされ、アルバート・ワトソンの撮影による衝撃的なヌード・ジャケットで話題を呼んだ。4年間のブランクの後に発表されたセルフ・プロデュース・アルバムは、シャーデー・アデューのムーディーな艶を持つ歌声が心地よい余韻を残す。それ以前の作品と変わらぬシャーデー節を展開した。また人気映画『幸福の条件』の挿入歌として“No Ordinary Love”が使われ、全英で最高10位、全米で同3位と、長いブランクを埋める好成績を記録。魅惑のシャーデー・サウンドは、時を隔てても一向に色あせない。
4枚目のアルバム「love deluxe(ラブ・デラックス)」
4枚目のアルバム「love deluxe(ラブ・デラックス)」以後、シャーデーのサウンドは、長きに渡り聞かれなくなり、その間、時代は大きく変化していった。ヒップ・ホップとソウル、ロック、ハウス、テクノなどの融合は、さらに進み、「シャーデー・サウンド」のような生音によって生み出される音数の少ないクールなサウンドは、時代遅れと思われがちな状況が進んでいた。ところが、8年間の活動休止を経て、2000年に発売された5枚目のアルバム「Lovers Rock(ラバーズ・ロック)」においては、まったくそんな時代の変化を感じさせない作品に仕上がっていた。シャーデーの芸術性をみごとに再確認させる、充実したソウルフルなアルバムを引っさげて帰って来たのである。本作からはクールビートや、流行の音楽からの借り物やヒップホップの小細工は聞こえてこない。本作はまさにシャーデーの音楽であり、どこを切っても「シャーデー・サウンド」と言えるその音楽性が表舞台に舞い戻ってきている。かつて流行のクラブ・サウンドの最先端として多くのフォロアーを生んだシャーデーのサウンドは、この頃「ワン&オンリー」の存在になっていた。
5枚目のアルバム「Lovers Rock(ラバーズ・ロック)」
天賦の美貌と知性、音楽の才能、そして類稀なる声を備えた唯一無二のカリスマ『シャーデー・アデュー』。
約7年振りの復活を遂げ2000年に発表された「ラヴァーズ・ロック」は、これまでになく生々しく、剥き出しなサウンドが特徴的な意欲作としても話題を呼び、全米3位、全英18位を記録。一貫して「愛」をテーマに歌い続けて来た彼女に今度は母親としての情感の豊かさが加わったこの作品で全世界を魅了した。
そして2010年、春。遂に10年振りとなる新作は、まったく無駄のない究極のクールネスに到達。
そして世界は再び、シャーデー色に染まる。
by JELLYE ISHIDA.
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