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【特集:Part.1】60余年の時を超え、史上初めて「正規」リイシューが実現 ‼ 来年2021年のサム・クック生誕90周年を早々と記念する限定盤Box Set『The Complete Keen Years 1957-1960』が発売

【特集:Part.1】60余年の時を超え、史上初めて「正規」リイシューが実現 ‼ 来年2021年のサム・クック生誕90周年を早々と記念する限定盤Box Set『The Complete Keen Years 1957-1960』が発売


 
【 天才シンガーの早すぎる死 】
 
サム・クックが逃げた女をめぐって言い争いになり、その激昂ぶりに恐怖を覚えた安モーテルの夜間管理人に撃たれて33歳の若さで命を落とした後、シカゴで行なわれた追悼式には2万人のファンが弔問に訪れた。
 

 
エンターテイナーの死はリズム&ブルースやポップスの世界だけでなく、ゴスペル界をも揺るがした・・・‼

ソウル・シンガーのルー・ロウルズとボビー・“ブルー”・ブランドは、ロサンゼルスでの彼の葬儀で歌を捧げた。
 

 
ゴスペル・シンガーのベッシー・グリフィンも歌うはずだったが、悲しみに打ちひしがれるあまり登壇することができなかった。

その代役として名乗りを上げたレイ・チャールズが歌う曲に、居合わせた人々は皆、深く心を震わせた。
 

 
その時レイは棺に手をあて涙を流しながらそっと最後の言葉をクックに囁く。
 

「サム・ベイビー、今からこの曲を君に捧げるよ」・・・と

 
そして、“Angels Keep Watching Over Me” を見事に歌い上げた・・・‼
 



 
ソウルとゴスペル両方のアーティストたちが共にサム・クックの功績を称え、その死を悼んだことは、世俗の音楽へとクロスオーヴァーした史上最初、そして最大のゴスペル・スターの見送りにはまさに相応しかったと言えよう。

ソウル・ミュージックの定義を確立した人物をひとり挙げるとするなら、それは間違いなく『Sam Cooke(サム・クック)』なのである ‼

これ以後、彼の死の経緯自体が折々議論の的となっているが、サム・クックの音楽に触れたことのある人々に共通の理解がひとつあるとすれば、それは彼が「誰とも違う才能」を持っていたということだ。

アトランティック・レコードのプロデューサー “ジェリー・ウェクスラー” は次のように語っている。
 

「サム・クックはこの世に生を受けた中で最高のシンガーだ、誰も彼には敵わないよ。彼の歌を聴いていると、いまだに信じられない気持ちになるんだ・・・」。

 


 
【 サム・クックの物語 】
 
米ソウル/ゴスペル歌手『Sam Cooke(サム・クック)』は、1931年1月22日にミシシッピ州クラークスデイルに生まれ、その後はシカゴで育った。

生地であるクラークスデイルは、ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカー、アイク・ターナーなどを輩出したデルタブルースの聖地であり、ベッシー・スミスの死没地でもある。

一方のシカゴは、ジャズはもちろん、のちのシカゴブルースやシカゴソウルといった黒人音楽文化の中心であるが、クックの通った学校の先輩には、ナット・キング・コールがいた。

サム・クックの父は牧師であった。そうしたこともあり、幼いころから兄弟たちとゴスペル・グループ「The Thinking Children(シンキング・チルドレン)」を組んで歌い、14才のときには教会の仲間たちと一緒に「Teenage Highway QCs = The Highway QCs(ハイウェイ・QCズ)」というジュビリースタイルのグループを結成。
 

 
リードヴォーカルとして活躍する最中、19才のときには実力派で名高いソウル/ゴスペル・グループ「The Soul Stirrers(ソウル・スターラーズ)」へ加入した。
 

 
1950年、ソウル・スターラーズのリード・シンガー「Rebert H. Harris(ロバート・ハリス)」がツアー中の放埓な生活に対する良心の呵責に耐えかね、グループを去る決断をした時、サム・クックがその後釜として抜擢されたのである。

この時、彼は二十歳になったばかりだった・・・‼

ソウル・スターラーズが所属する「Specialty Records(スペシャルティ・レコード)」のオーナーで音楽の好みにうるさかったアール・ループは、ハリスの代わりにレコーディングの場に現れた無名の青年クックに対し露骨に難色を示すも、歌を聴いた瞬間納得したのだ。

このセッションで録られた、初のシングル曲 “Jesus Gave Me Water” は、ハリス時代を上回るスターラーズ過去最大のヒットを記録した。



この頃からすでに、耳に心地よく、軽やかに語りかけるように歌うクックの「ストーリーテラー」的な特質の萌芽が聞いて取れる・・・‼

ソウル・スターラーズのリード・シンガーとして6年間活躍した後、1957年からソロ歌手としてR&Bに転向。

同年「Keen Records(キーン・レコード)」からリリースしたデビュー・シングル “Summertime” のB面曲 “You Send Me” が大ヒットしビルボードのR&Bチャートで6週間第1位を記録した。
 

 
1959年にキーン・レコードを離れ、1960年にRCAビクターと契約するも、キーン・レコード時代に録音し未発表だった「The Wonderful World Of Sam Cooke」が同レーベルから発売されヒットする。
 

 
その後もクックの曲は、『ビルボード』のR&Bチャートだけでなく、ポップ・チャートでも上位に入った。

1960年代には、「Chain Gang」(2位)、「Twistin’ the Night Away」(9位)、「Another Saturday Night」(10位)、「Shake」(7位)を全米トップ10に送り込んでいる・・・。

特記すべきは、当サイトの別カテゴリー「The Roots music」の “VOL.1:Billboard(ビルボード)1963年/黒人音楽の不在” で以前掲載したように、クックが不慮の死を遂げた翌年の1965年1月30日号「ビルボードR&B チャート」の内容である。

 

1965年1月30日号にて復活した “Hot Rhythm & Blues Singles” 。目を凝らして見て頂ければ驚くべき内容に気が付くだろう。

チャートが復活する前年の1964年12月11日は、偉大なるソウル歌手『Sam Cooke(サム・クック)』がロサンゼルスで不慮の死を遂げた年である。にもかかわらず、彼の死から10日後にリリースされた 、“Shake” が6位、、“A Change Is Gonna Come” が10位にチャート入りし、サム・クックの亡くなった年にセルフ・カバーされ、シングルカットされたA面の “Cousin Of Mine” が40位と3曲もチャート入りしているのだ。


 

発展目覚ましかったソウル/R&B界のスターとなったクックは、1964年12月11日に33歳の若さで他界する短くも太い生涯の間において数々のヒットを飛ばし、それまでの黒人歌手のスタイルとは一線を画した ‼

その洗練された音楽性はもとより、最大の魅力は声の良さと歌唱力であり、何とも滑らかなメリスマ唱法を駆使した独特のハスキーヴォイスは「クック調(一聴でそれとわかる独特のノートベンディング法を編み出した)」と呼ばれ、その鼻にかかった歌い方は当時の白人にも高く評価され、後世においてもソウル/R&B界に大きな影響を与え続けている。

そして来年の2021年は、『Sam Cooke(サム・クック)』の生誕90周年を迎える年にあたる・・・‼
 


 
【 サム・クック生誕90周年 ‼ 限定盤ボックスセット 】
 
実は昨年2019年12月4日(初回:2019年11月21日)、「ABKCO Music & Records, Inc」のサイトにて驚きのリリース情報(上記)が公開された。

その記事冒頭には、「Celebrating Sam Cooke at 90 – ‘The Complete Keen Years’ Box Set」の表題と共に「Kicking off a year-long celebration of the 90th anniversary of Sam Cooke’s birth, starting this January 24 with the release of The Complete Keen Years: 1957 – 1960, a remastered, extensive 5-disc box set.」の文字。

つまり、「サム・クック生誕90周年の1年にわたる祝賀の始まり。来年(2020年)1月24日から、The Complete Keen Years:1957–1960がリマスターされた5枚組のボックスセットにてリリースされる。」との告知であった・・・‼

そして今年、告知通りサム・クック生誕90周年を早々と記念する、初期ソロ・アルバムを収録した限定盤ボックスセット『Sam Cooke:The Complete Keen Years 1957-1960 [Box Set/5CD]』が2020年1月24日にUMCレーベルから発売された。

 

 

 

限定盤5CDボックスセットには、1957年から1960年にかけて「Keen Records(キーン・レコード)」からリリースされたオリジナルアルバム5タイトル『Sam Cooke』(1958年)、『Encore』(1958年)、『Tribute To The Lady』(1959年)、『Hit Kit』(1959年/編集盤)、『The Wonderful World Of Sam Cooke』(1960年)とボーナス・トラック15曲を含む全76曲が収録されている。

Keen録音のまとまった「正規」再発は、2000年のCDセット『The Man Who Invented Soul』(RCA)のディスク1(21曲)や、2003年の『Tribute To The Lady』(ABKCO)の拡大版CD以来となる。

Keenのボックスといえば、以前UKのNot Nowレーベルから3枚組の廉価版「Keen Records Story [Box Set/3CD] (2010年1月11日)」が発売されているが、60年代にリリースされていた『I Thank God(Keen LP 8-6103)』(1960年) や、 『Wonderful World Of Sam Cooke(Keen LP 8-6106)』(1960年)からの曲は収録されておらず、今回その収録漏れは完全に網羅されている。(※「Keen Records Story」の56曲から、20曲増量の76曲)

 

 

 

ただ実際には、Keen時代にリリースされたアルバムは全6枚のアルバムを残しており、今回リリースされたオリジナルアルバム5タイトル以外に、2つのゴスペル・グループとのカップリング盤となる1枚『I Thank God』(全12曲)からは、サムの4曲(全て59年録音)の内2曲が、Disc 5アルバム『Wonderful World Of Sam Cooke』のボーナス・トラックとして収録されている。(※ 本アルバムの5曲目「That’s Heaven to Me」と12曲目「I Thank God」は『Wonderful World Of Sam Cooke』にも収録されているため)

 

 

 

収録曲は今までにもデジタル化され、何度も編集盤がリリースされてきているもので珍しさはないが、期待させられるのはその音質であり、今回のUMCレーベルはNot Now UKのような、ただの寄せ集めとは違い、直接「ABKCO Music & Records, Inc」の息がかかったものである。

更に驚くことに、JohnとAlexのSiamas兄弟が設立したKeenレーベルで、1950年代後半から60年代初頭にかけて録音されたオリジナル・マスターは、Keen閉鎖後に行方不明になっていたが、それが近年になって飛行機の格納庫から発見されたのである ‼

今回の『Sam Cooke:The Complete Keen Years 1957-1960 [Box Set/5CD]』は、そのオリジナル・マスターテープから直接供給された最高級音質による正真正銘の「Keenボックスセット」であり、60余年の時を超え、史上初めて「正規」リイシューが実現したことは、多くのファンにとって狂喜とも言える代物である。
 

 
また、Keenでアーカイブされていたレアな写真や資料、膨大なセッション記録、Michael Corcoranによるライナーノーツも収録されている。

Keenにおける一連のレコーディングには、1960年代へと時代が移り変わる中、ソウル・サウンド(サザン=ディープソウル、そして60’sアーリーソウルの進展)のパイオニア “ミスター・ソウル” の称号に相応しい『Sam Cooke(サム・クック)』の偉業が克明に刻まれている。
 

 
この後、クックは米最大手の一社「RCA(Radio Corporation of America) Victor Records」に移籍し、米エンタテイメント界の頂上に向けて猛進を加速させるとともに、民族の尊厳をなおいっそう公に標榜していく。そしてそのことが、クックの悲劇をまねく一因にもなったのではなかろうか・・・‼

(つづく)

by JELLYE ISHIDA.




Disc 1:Sam Cooke - originally released on Keen in 1958

初の全米No.1シングル「You Send Me」や、代表曲「Summertime (Part 2)」、「Ain’t Misbehavin’」、「That Lucky Old Sun」、「Danny Boy」などを収録したモノラル・アルバム。ゴスペル・シンガーが、まだ見ぬソウル・ミュージックの雛形を生み出したポップ・アルバム。クックのリラックスした雰囲気やクリアなイントネーション、そして卓越したヴォーカル能力は、他のポップ/R&Bのシンガーと一線を画すものだった。今尚色褪せることのないクックのキャリアの夜明けを告げた作品。

[ Disc 1:曲目リスト]

1. You Send Me
2. The Lonesome Road
3. Tammy
4. Ol’ Man River
5. Moonlight in Vermont
6. Canadian Sunset
7. Summertime (Part 2)
8. Around the World
9. Ain’t Misbehavin’
10. The Bells of St. Mary’s
11. So Long
12. Danny Boy
13. That Lucky Old Sun


Disc 2:Encore - originally released on Keen in 1958

1958年のセカンド・アルバム。「Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive」、「When I Fall In Love」、「I Cover the Waterfront」、「The Gypsy」ほかを収録。オーケストレーションのプロデュースはBumps Blackwell。

[ Disc 2:曲目リスト]

1. Oh, Look at Me Now
2. Someday
3. Along the Navajo Trail
4. Running Wild
5. Ac-cent-tchu-ate the Positive
6. Mary, Mary Lou
7. When I Fall in Love
8. I Cover the Waterfront
9. My Foolish Heart
10. Today I Sing the Blues
11. The Gypsy
12. It’s the Talk of the Town


Disc 3:Tribute to The Lady - originally released on Keen in 1959

1959年リリースの、Billie Holidayに捧げられたサード・アルバム。モノラル録音。Billie Holidayの名曲群から選ばれた「God Bless The Child」、「I’ve Gotta Right To Sing The Blues」、「Good Morning, Heartache」、「Crazy She Calls Me」などをカヴァー。ライナーノーツ執筆者のMichael Corcoranによれば、誰かの真似ではない自分自身の声をクックが発見した作品。オリジナルはビリー・ホリデイの曲だが、本作におけるクックは完全に自分のモノにしている。

[ Disc 3:曲目リスト]

1. God Bless the Child
2. She’s Funny That Way
3. I Gotta Right to Sing the Blues
4. Good Morning Heartache
5. T’aint Nobody’s Business (If I Do)
6. Comes Love
7. Lover Girl (Man)
8. Let’s Call the Whole Thing Off
9. Lover Come Back to Me
10. Solitude
11. They Can’t Take That Away from Me
12. Crazy She Calls Me


Disc 4:Hit Kit - originally released on Keen in 1959; 9 bonus tracks

1959年発表のベスト・セレクション。original mono versions of 「Only Sixteen」、「Everybody Loves to Cha Cha Cha」、「Win Your Love For Me」、「You Were Made For Me」のオリジナル・モノ・ヴァージョンを含む12曲に、レアなKeenからのシングルのレアなステレオ・ヴァージョン6曲を含む9曲のボーナス・トラックを収録。

[ Disc 4:曲目リスト]

1. Only Sixteen
2. All of My Life
3. Everybody Loves to Cha Cha Cha
4. Blue Moon
5. Win Your Love for Me
6. Lonely Island
7. You Send Me
8. Love You Most of All
9. (I Love You) for Sentimental Reasons
10. Little Things You Do
11. Let’s Go Steady Again
12. You Were Made for Me
13. Lonely Island (Single Version) [Bonus Track]
14. Win Your Love for Me (Stereo) [Bonus Track]
15. Almost in Your Arms (Theme from Houseboat) [stereo] [Bonus Track]
16. Everybody Loves to Cha Cha Cha (Stereo) [Bonus Track]
17. Little Things You Do (Stereo) [Bonus Track]
18. Only Sixteen (Stereo) [Bonus Track]
19. Let’s Go Steady Again (Stereo) [Bonus Track]
20. With You (Stereo) [Bonus Track]
21. Ee-i-ee-i-oh Aka Ee-yi-ee-yi-oh (Stereo) [Bonus Track]


Disc 5:The Wonderful World Of Sam Cooke - originally released on Keen in 1960; 6 bonus tracks

1960年発表の4thアルバムにして、Keenレーベルにおける最終作。アルバム・タイトルにも引用された「(What A) Wonderful World」は、当時のKeenにスタッフとして在籍していた後のレジェンド=Lou Adler 、Herb Alpertがクックと共作した曲。「That’s Heaven To Me」、「You Were Made For Me」、「Almost In Your Arms (Love Song From “Houseboat」も聴きどころ。「Steal Away (Single Version)」や、アルバム未収録の「One Hour Ahead of the Posse」、「So Glamorous」、そしてアルバム『I Thank God』からサムの2曲、「Steal Away」、「Deep River」などのボーナス・トラックを6曲収録。

[ Disc 5:曲目リスト]

1. (What A) Wonderful World
2. Desire Me
3. Summertime (Part 1)
4. Almost in Your Arms (Love Song from ‘Houseboat’)
5. That’s Heaven to Me
6. No One (Can Ever Take Your Place)
7. With You
8. Blue Moon
9. Stealing Kisses
10. You Were Made for Me
11. There I’ve Said It Again
12. I Thank God
13. Steal Away (Album Version) [Bonus Track]
14. Deep River [Bonus Track]
15. One Hour Ahead of the Posse [Bonus Track]
16. Ee-i-ee-i-oh Aka Ee-yi-ee-yi-oh [Bonus Track]
17. So Glamorous [Bonus Track]
18. Steal Away (Single Version) [Bonus Track]
 

5.0 rating

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