また2000年には、1972年版がついに「20th Century Masters:The Millennium Collection: The Very Best Of Marvin Gaye, Vol 2:The 70’s(20世紀マスターズ ミレニアム・コレクション:ザ・ベリー・ベスト・オブ・マーヴィン・ゲイ、第2巻:1970年代)」としてリリースさた。
今回リリースされた『You’re The Man』の収録内容は全17曲のうち、Hip Hop/R&Bシーンの名プロデューサーで、「Nas(ナズ)」やLauryn Hill(ローリン・ヒル)がヴォーカルを務める「The Fugees(フージーズ)」、「Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)」や「Amy Winehouse(エイミー・ワインハウス)」までを手掛けた「Salaam Remi(サラーム・レミ)」によって新しく編集された“My Last Chance”、“Symphony”、“I’d Give My Life For You”の3曲、また1972年にクリスマス・シングル曲でロングLPヴァージョンではお蔵入りになったレア曲“I Want To Come Home For Christmas”や、B面のメロウなノン・サウンドトラック(インストゥルメンタル)未発表曲“Christmas In The City”、また、「Willie Hutch(ウィリー・ハッチ)」がプロデュースした4曲や「Donald Byrd(ドナルド・バード)」のカヴァー曲で、“Where Are We Going?(Alternate Mix 2)”と“Woman of The World”も収録されており、どちらもモータウンの専属の作曲家で名曲を生み出している「Mizell brothers(ミゼル・ブラザーズ)」の楽曲といった、『You’re The Man』の収録曲はこれまでも様々なCDに収録されてきたが、今回17曲のうち15曲はLP盤では初めてである…。
また、連載記事では紹介しなかったが、タイトル曲“You’re The Man”のファルセット歌唱でないヴァージョン「Alternate Version 2」を、現役で活躍し続けるリミキサーの祖として讃えられている“偉大な才能の職人(パイオニア)”「John Morales(ジョン・モラレス)」が見事にリミックスした“Alternate Version 2:Unreleased Extended Mix”など、今回のアルバムリリースによって再びスポットを浴びる機会となるだろう…‼
今回紹介する“You’re The Man”(Alternate Version 2:Unreleased Extended Mix/Rare mix by John Morales)からも、改めて彼らの音楽に対する愛情は勿論の事、リミックスに関する洗練された能力によって、どれほどダンス・ミュージックに貢献をしてきたかという歴史を伝える素晴らしい作品の一つとなっている…‼
47年の時を経てリリースされたMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)“幻”の未発表アルバム『You’re The Man』は、1984年4月1日にマーヴィン・ゲイが悲劇の死を遂げてから、本作で4枚目の「没後アルバム・リリース(新譜)」となる…‼
1984年4月1日にマーヴィン・ゲイが悲劇の死を遂げてから、本作で4枚目の「没後アルバム・リリース(新譜)」となる『You’re The Man』から、独自にセレクトしたタイトル曲を含む5曲をお聴き頂きたい ‼
1. You’re The Man, Pt. I & II [Single Version].
2. The World Is Rated X [Alternate Mix].
3. Piece Of Clay.
4. I’m Going Home.
5. Checking Out (Double Clutch).
『The Sound Of Young America』をモットーとして、“Hitsville USA”という愛称でも親しまれたモータウンは、タムラを筆頭に、ゴーディ、ソウル、V.I.P.などの傍系レーベルも加えながら、後にファンク・ブラザーズと称される腕利きミュージシャンたちを起用してモータウン・サウンドを確立。副社長にしてミラクルズのメンバーでもあったスモーキー・ロビンソンやホーランド=ドジャー=ホーランドらを専属作家として、軽やかで弾むようなビートと口ずさみたくなるメロディで若者に向けたポップな楽曲を送り出していった。次々とヒットを量産する様は地元デトロイトの自動車工場にも例えられた。アーティストとしては、シュープリームスやマーサ&ザ・ヴァンデラス、マーヴェレッツといった女性グループ、テンプテーションズやフォー・トップスといった男性グループ、そしてマーヴィン・ゲイや、現在も唯一の生え抜きとしてモータウンに所属するスティーヴィー・ワンダーなどを輩出。創立から5年を経た60年代半ば頃には全米を代表するレーベルとなり、ビートルズやローリング・ストーンズなどにも影響を与えながら世界中で親しまれていくようになる。
2004年には、音楽業界屈指の女性エグゼクティヴであるシルヴィア・ローンが社長に就任。2005年から2011年までの新譜は、主にユニバーサルと合併した“ユニバーサル・モータウン”というレーベルからのリリースとなり、KEMなどがヒットを飛ばした。その後、2012年にモータウンへ移籍したNe-Yoが同社の要職に就いたあたりからはモータウンという名称に戻し、モータウン・ゴスペルも発足。〈TheNew Definition Of Soul〉をモットーに掲げる現在はBJ・ザ・シカゴ・キッドやミーゴスなど新世代のR&B/ヒップホップ・アクトを抱え、ユニバール傘下のキャピトル・ミュージック・グループとも連携を図りながら新しい音楽を発信し続けている。その姿勢は、まさに〈TheSound Of Young America〉という当初のモットーのまま。創立60周年を迎えたモータウンは、今もかつてのスピリットを受け継ぎながら未来に向かっているのだ。
[論考]
・吉岡正晴「『ホワッツ・ゴーイング・オン』がアメリカ音楽業界とアメリカに残したもの」
・湯浅学「『離婚伝説』伝説」
・押野素子「マーヴィン・ゲイの性と愛」
・出田圭「リオン・ウェアとマーヴィン・ゲイ」
・長澤唯史「女々しくて辛い場所に辿り着いたアイドル――マーヴィン・ゲイと60年代の感情革命」
・マニュエル・ヤン「What’s Going On, Brother――マーヴィン・ゲイとアメリカ労働者階級の悲劇」
ディスクガイド:河地依子、小出斉、二木信
また5月28日には、大好評を博している本作の日本盤CDにて対談ライナーノーツを担当した、キーボーディストの「SWING-O氏」と音楽ジャーナリストの「林 剛氏」が、ライナーノーツでは語りきれなかったことを含め、改めてアルバムの実像に迫りながら、マーヴィン・ゲイとニュー・ソウルや創立60周年を迎えたモータウンの話などに触れ、マーヴィン・ゲイ“幻”のアルバム『You’re The Man』解剖対談イベントが開催された。
【マーヴィン・ゲイと本作品の論考】
さて、本作に関するここまでの記述は、他のメディアや雑誌においても知ることができ、おおむね簡単に情報として得られる「作品説明」と言える。よって、当サイトにおいても、“47年の時を経てリリースされたMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)“幻”の未発表アルバム『You’re The Man』”と言った、極めてありきたりなタイトルとさせて頂いた…。
ただ、先行シングルだったタイトル曲が完成されずに終わったアルバムということで、本作自体を「幻のアルバムの復活」と思ってしまう方もいるかも知れないが、実際は死後に出された「Dream of a Lifetime」などと同じアルバム未収録曲集で、しかも多くの曲は(ミックス違いもあるにせよ)発表済みのものである。
そして特筆すべき重要なことは、マーヴィン・ゲイのディスコグラフィーでの説明では一般的によく語られている、1971年の傑作『What’s Going On』、そして1973年の傑作『Let’s Get It On』と言う“音楽史に残る名盤” 2枚の間に発表されるはずだったアルバムと言われているが、実際には元々、『What’s Going On』に先行されて企画されていたアルバムこそが『You’re The Man』なのである…‼
表題曲“You’re the man”-[米国大統領選挙運動が始まったときの政治的な非行動に対する浸透していた皮肉の意]-は、歴史的名盤『What’s Going On』の後、約1年後にEPとして1972年春にリリースされ、全米チャート50位、R&Bチャート7位と大ヒット(クロスオーバー・ヒット)に至らなかったが、このアルバムの魅力でもある歌詞の内容を踏まえれば、当時のニクソン政権を過激に批判した政治的なメッセージ・ソングから、マーヴィン・ゲイならではのラヴ・ソング、そして後に発表されたファンキーな“Got To Give It Up”、“A Funky Space Reincarnation”、“Ego Tripping Out”と合わせて、彼の「四大ファンクの名曲」の中の一曲が表題曲“You’re the man”であることなど、ともすれば一貫性に欠けていると思われるこのアルバムの意義や価値というものは、思いのほか感慨深い真相が横たわっており、そう簡単に本作を批判(批評)することは困難であろう…。
また、1971年の傑作『What’s Going On』、そして1973年の傑作『Let’s Get It On』と言う“音楽史に残る名盤” 2枚の間に発表されるはずだったアルバムうんぬん…と言った固定観念が独り歩きする中で、本作を鋭い輪郭で描こうとすればするほど、尚のことその批評・評論家(文芸批判)が下す評価はことのほか乱暴な論評に陥り兼ねない…。
また、マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスとのデュエット・アルバムを準備していたプロデューサーの「ハル・デイヴィス」と一緒に“The World Is Rated X”を制作。そしてマーヴィンはベトナム戦争に対する怒りや戦地にいた弟の経験を“What’s Going On”に続く“I Want To Come Home For Christmas”を作り上げ、“You’re The Man”をシングルカットした。
本作のライナー・ノーツを担当したマーヴィン・ゲイの伝記作家で、創作意欲と精神的な重責の狭間で彼が戦っていた内なる葛藤を探求している「デイヴィッド・リッツ」の手掛けた伝記本『Divided Soul: The Life of Marvin Gaye』で初公開されたインタビューの中で、マーヴィン・ゲイは「What’s Going On」の成功についてこう語っている…。
FRANCE – CIRCA 1964: Miles Davis in Paris, France in 1964 – Miles Davis, Jazzman, Pleyel Hall. (Photo by Herve GLOAGUEN/Gamma-Rapho via Getty Images)
この未発表アルバム『 You’re The Man』のリリースに加え、モータウンとユニバーサル・ミュージック・エンタープライズは、ナット・キング・コール100回目の誕生日にあわせた3月15日にMarvin Gayeの1965年のアルバム『A Tribute To The Great Nat King Cole』の新たな拡張版(デラックス・エディション)をデジタルでリリースする予定。そのアルバムは、オリジナルのモノ・ミックスを使用、スタジオ・セッションからの6つのオルタナティブ・テイクを含む、12曲以上のボーナス・トラックが新たに追加される予定となっている。
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