【 Billboard(ビルボード)1963年/黒人音楽の不在 】
1963年11月30日号の「Billboard(ビルボード)誌」を手にした読者は驚いたことだろう。
何故かと言えば、その当時、ビルボードチャートに前の週まで存在していたはずの “R&B チャート” が忽然と消えていたからである・・・。しかも、それは単なる印刷ミスでもなかった。
ビルボード誌はその後、60号以上に渡って「黒人音楽のランキング」を掲載せず、1年2カ月が経過した1965年1月30日号にてようやく “R&B チャート” は復活するのである。
1965年1月30日号にて復活した “Hot Rhythm & Blues Singles” 。目を凝らして見て頂ければ驚くべき内容に気が付くだろう。
チャートが復活する前年の1964年12月11日は、偉大なるソウル歌手『Sam Cooke(サム・クック)』がロサンゼルスで不慮の死を遂げた年である。にもかかわらず、彼の死から10日後にリリースされた 、“Shake” が6位、、“A Change Is Gonna Come” が10位にチャート入りし、サム・クックの亡くなった年にセルフ・カバーされ、シングルカットされたA面の “Cousin Of Mine” が40位と3曲もチャート入りしているのだ。
1942年にはじめて「黒人音楽のチャート」を掲載してから現在に至るまで、ビルボード誌が黒人音楽のランキングを発表しなかったのは、後にも先にもこの1年2カ月間だけである・・・。
1894年11月1日に創刊された音楽業界誌「Billboard(ビルボード)」に最初のヒットチャートが掲載されたのは1936年1月4日、ジュークボックスで流れたヒット曲の一覧「Most Played In Jukeboxes」を発表。黒人音楽のランキングはその六年後の1942年10月24日号に“ハーレム・ヒット・パレード”という名称で登場する。
このチャートは、その名の通りニューヨークのハーレム地区のレコード店6店舗の売り上げに基づくランキングで、その週の1位を獲得したのは黒人ジャズ・ミュージシャン『Andy Kirk(アンディー・カーク)』の“Take It and Git(テイク・イット・アンド・ギット)”であった。
【 Take It and Git/Andy Kirk(アンディー・カーク)】
「Billboard(ビルボード)」初の黒人音楽のランキング1位を獲得した黒人ジャズ・ミュージシャン『Andy Kirk(アンディー・カーク)』の“Take It and Git(テイク・イット・アンド・ギット)”。
ここで注意すべきは、ビルボード誌の黒人音楽チャートは「アフリカ系アメリカ人アーティスト」の作品ランキングではなく、「アフリカ系アメリカ人リスナー」に人気の高い作品を反映している点だ・・・。
それ以降、ビルボード誌の黒人音楽チャートは時代に合わせて次々に名称を変え、「ハーレム・ヒット・パレード(1942年)」をスタートに、「レイス・レコード(1945年)」、「リズム&ブルース(1949年)」、「ソウル(1969年)」、「ブラック(1982年)」、1990年には再び「R&B」、そして1999年に「R&B/ヒップホップ」とそれぞれの時代のジャンル名を反映させながら、アフリカ系アメリカ人の音楽的嗜好を記録し続けている。
ただし、1963年11月から1965年1月を除いて・・・。
by JELLYE ISHIDA.
【 Billboard(ビルボード)誌 / 黒人音楽チャート遍歴 】・1942年10月~45年02月:Harlem Hit Parade.
・1945年02月~49年06月:Rase Records.
・1949年06月~58年10月:Rhythm & Blues Records.
・1958年10月~63年11月:Hot R&B Sides.
・1963年11月~65年01月:黒人音楽の不在
・1965年01月~69年08月:Hot Rhythm & Blues Singles.
・1969年08月~73年07月:Best Selling Soul Singles.
・1973年07月~82年06月:Hot Soul Singles.
・1982年06月~90年10月:Hot Black Singles.
・1990年10月~1999年:Hot R&B Singles.
・1999年~2005年:Hot R&B / Hip-Hop Singles & Tracks.
・2005年~2009年:Hot R&B / Hip-Hop Singles.
・2009年~:R&B / Hip-Hop Songs.
【 Billboard Hot 100(ビルボードホット100)】
1940年7月27日号で初めて独自の統計から割り出した、ヒット曲のチャート「Chart Line(チャートライン)」が導入。現在も続いているBillboard Hot 100の原形とも言えるこのランキングは当時、ラジオで最も多く放送された曲を中心に構成さた。この時1位を獲得したのは、ジャズトロンボーン奏者、バンドリーダー『Tommy Dorsey(トミー・ドーシー)』の“I’ll Never Smile Again(アイル・ネバー・スマイル・アゲイン)”であった。
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