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連載 ‼ Marvin Lover. VOL.1:Inner City Blues/インナーシティ・ブルース(都市のブルース)

連載 ‼ Marvin Lover. VOL.1:Inner City Blues/インナーシティ・ブルース(都市のブルース)

1971年発表、マーヴィン・ゲイのアルバム『What’s Going On』の最後に収録された曲で、タイトルの「インナーシティ」という言葉は、都市部、都市近隣部、文脈によってはスラム街を指す・・・。

マーヴィンのヒット曲「Inner City Blues」は、全編をファルセットで通した初めての曲。それにもまして、天才ベーシスト「ジェームス・ジェマーソン」の印象的なベースラインで勝負あったようなもの(これは「What’s Going On」にも言える)。コード進行がジャズやポピュラーの要素を大幅に取り入れた複雑なコード進行が中心になったことで、ジェームス・ジェマーソンの演奏が開花しているのも素晴らしい。

ジェマーソンはモータウンで仕事をする前はもともとジャズ系のアップライト・ベーシストだったことで、ジャズ的展開はお手のものだったのだろう。もちろん純粋なジャズではなくてファンキーなR&Bなので、結果、ジャズファンク、アシッドジャズ的な演奏となっている。

マーヴィンの歌唱法も、60年代のストレートなシャウト型から、ファルセットを多くまじえた、緩急をつけたスタイルに変化し、「Inner City Blues」ではじまったファルセットの多用は翌年の「Trouble Man」以降、特に顕著であり、いわゆるスウィート・ソウルの源流になったとも言える。

そして、マーヴィンらが築いた「精神性とメッセージ性」。マーヴィン・ゲイが社会的なメッセージを歌ったのは実はアルバム『What’s Going On』だけなのだが、このアルバムの成功が黒人ミュージシャンの「自立」を後押ししたのは否定できない。

つまり、レコード会社に与えられたあたりさわりのない歌詞でなく、自己の主張をこめたメッセージを黒人音楽家が主張しやすくする、そういった土台をつくったと言えると同時に、フィラデルフィア・ソウルの精神性の源流にもなっている。

歌詞の最後の部分は、「ヒッピー・反体制 vs. 大人・体制」という図式で、『Inner City Blues』の文脈とは少し異なるが、同アルバムの冒頭に収録されているタイトル曲『What’s Going On』からの引用で、アルバムの統一性を強く打ち出している。

少なくとも今日現在、もともと黒人のものだったブルーズが、ここでは人種を超えた、白も黒も黄色も無い、貧困に苦しめられる人々全てのブルーズが歌われている・・・。

それでは、最高のパフォーマンスであろう“Live At The Kennedy Center Auditorium, Washington, D.C. / 1972”での「Inner City Blues. ~ What’s Going On.」をお聴き頂きたい。

by JELLYE ISHIDA.


【 Inner City Blues 】

ロケット。月打ち上げ
持たざる者達にその金を使ってくれよ
俺たちが稼いだ金は
手にする前に、お前らが巻き上げちまう

叫びたくもなるだろう
俺の生活をこんなふうにされて
叫びたくもなるさ
俺の生活をこんなふうにされて

こんな生活って無いぜ、こんな生活って
間違ってるよ、こんなのって

インフレ。もう無理、
金の工面なんて
請求書は空高く積みあがり
若者は死地へと送られる

叫びたくもなるさ
俺の生活をこんなふうにされて
叫びたくもなるさ
俺の生活をこんなふうにされて

苛立ち、落ち込み
不運、後退
ありのままの事実なんだが
ねえ、俺はもう税金を払えないよ

叫びたくもなるさ
もうお手上げなんだ
叫びたくもなるさ
もうお手上げなんだ

犯罪は増え
警官達はやたらとぶっ放す
パニックは広がり
神は知る、俺たちがどこへと向かっているのか

母さん、母さん
俺たちが間違ってると皆は言う
長髪にしているってだけで
あいつらは俺たちを批判しているんだ・・・

Live At The Kennedy Center Auditorium, Washington, D.C. / 1972での「Inner City Blues. ~ What’s Going On.」なのだが、はたしてこのライブ音源が実際に上記のライブを収録したものか明らかではない。

というのも、同じくLive At The Kennedy Center Auditorium, Washington, D.C. / 1972での「Inner City Blues. ~ What’s Going On.」のライブ音源には、明らかにこれとは別のライブ音源が存在するからである。(※ 下記のライブ音源がその存在を示す)


大好きな「サラ・ヴォーン」のInner City Bluesも最高❣

「エタ・ジェームス」も負けてはいない❣

極めつけは、1964年ジェームス・ブラウンのバックバンドに参加し、サックス奏者としてファンクミュージックにおいて最も主要な人物の一人「メイシオ・パーカー」のInner City Bluesは最高にクール❣


さて、マーヴィンのこの1972年ライブ音源に重要な関心を持ってお聞き頂けただろうか…❓

ボトムライン(ドラムとベース)とマーヴィンの主線のみを最大限に強調し、コーラスを無くし、他のメロディーアンサンブルを極力抑えてのライブ音源には、歌い手にとって泣きたいほど貴重なものである…‼

侯爵ついでに、これぞ至極の「ファンキー」な1974年のライブでの「Inner City Blues」をお届け…❣


[ 連載 ‼ Marvin Lover. ]

 VOL.1:Inner City Blues/インナーシティ・ブルース(都市のブルース)

 VOL.2:お蔵入りしたマーヴィン・ゲイの名曲『You’re The Man』

 VOL.3:マーヴィン・ゲイの『トーン(声)を自由自在に操る才能』

 VOL.4:ビルボード誌の集計においてマーヴィン・ゲイ最大のヒット曲 “ I Heard It Through the Grapevine ”(邦題:悲しいうわさ)/ Single Cover,1968

 VOL.5:Live At Oakland Coliseum, CA 1974

 VOL.6:単独で聴いては魅力が伝わらない ‼ 華麗なる曲『Mercy Mercy Me (The Ecology)』


5.0 rating

COMMENTS & TRACKBACKS.

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  1. ネットフリックスで配信されているスパイク・リーの映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』の冒頭でこの曲がBGMとして使われていて、すごくカッコよかった。モハメッド・アリの短いインタビュー映像に続いて黒人目線で語られるベトナム戦争関連のニュース映像にこの曲が被せられていて、黒人を取り巻く状況は50年前から何も変わってないよ、という強いメッセージになっています。

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