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連載 ‼ Marvin Lover. VOL.6:単独で聴いては魅力が伝わらない ‼ 華麗なる曲『Mercy Mercy Me (The Ecology)』

70年代前半、マーヴィン・ゲイが社会的なメッセージを歌った、後にも先にもたった一枚のアルバム『What’s Going On』。このアルバムの成功が黒人ミュージシャンの「自立」を後押し、70年代前半に「ニューソウル」というムーブメントとなって結実した ‼

そして、レーベル・メイトのStevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)、それから Curtis Mayfield(カーティス・メイフィールド) Donny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)といういわゆる「四天王」の黄金時代となった…。

1971年にリリースされた『What’s Going On』から、1976年の『I Want You』における、メロウなグルーヴや妖しいファルセット、そして多重コーラスなど、その後の気高いソウル・スピリットを表明する際の手段として、“Mercy Mercy Me (The Ecology)”はその代表とも言える楽曲であり定番となるソウル・ナンバーである。




また、『What’s Going On』のセカンドシングル “ Mercy Mercy Me (The Ecology) ” は、タイトルトラックの成功の突破口を経てマーヴィン・ゲイのみによって書かれ、ポピュラー音楽の中でも最も環境に優しい悲しみの国歌の1つと見なされるようになった。

1971年8月14日から8月27日まで、BillboardのPop Singlesチャートで4番、R&B Singlesチャートで2週間で1番に浮上したこの曲はまた、マーヴィン・ゲイにアダルトコンテンポラリーチャートの彼にとって稀な登場の1つをもたらした。

1991年には、スモーキーロビンソン、ジョニーギル、ビッグダディケーン、ホリーロビンソンピーテ、ラルフトレスベント、ボビーブラウン、ロージーペレス、ベルビブデヴォー、ウェズリースナイプス、タイラーコリンズ(歌手)、マルコムジャマルワーナー、ダイアナロス、スティービーワンダー、デビッドボウイ、ステファニーミルズ、デビーハリーとヴァネッサL.ウィリアムズなどの有名人の出演をフィーチャーした、この曲のミュージックビデオがモータウンレコードによってリリースされた。

シングルがWhat’s Going Onから2番目の100万枚となったとき、アルバムはトップ5のソウルアルバムチャートから始まり、ポップランキングをチャージし始めた。そして、“Mercy Mercy Me (The Ecology)”は間もなく彼の豊富な楽曲の中で最も有名な曲の1つになり、 2002年には「グラミーの殿堂入り」を受賞したのは彼の3回目のシングルレコーディングであった。そして、“Inner City Blues”と同様に、James JamersonではなくBob Babbittがベースラインを演じている。

 


【 Bob Babbitt(ボブ・バビット)/ 1937–2012 】

Bob Babbitt(ボブ・バビット)は、Motown(モータウン)の「James Jamerson」の影から始めたかもしれないが、彼は第一世代のセッションベースのアイコンの中で最も特徴的で耐久性のあるキャリアの1つを持ち続け、200以上のヒットシングルと25以上のゴールドレコードに出演した。

1937年11月26日、ピッツバーグで生まれたバビットは、古典的なアップライトベースを子供の頃から学び、すぐにR&Bに魅了された。地元のジョイントを演奏した後、彼はエレクトリックベースに切り替え、1961年にデトロイトに移り、クラブ、ロード、そして最終的にスタジオミュージシャンとして活動した。

彼はMotownのBerry GordyがGolden World Recordsを購入したとき、Motownを支えたスタジオミュージシャン集団「The Funk Brothers(ファンク・ブラザーズ)」の一員としてベーシストを務めた。

バビットは、「Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)」の“Signed, Sealed, Delivered I’m Yours”や「Smokey Robinson(スモーキー・ロビンソン)& the Miracles(ミラクルズ)」の“Tears of a Clown”、「The Temptations(テンプテーションズ)」の“Ball of Confusion”、そして「Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)」の“Inner City Blues”など、多くの楽曲に参加している。

特にマーヴィン・ゲイのアルバム『What’s Going On』においては、全曲ファンク・ブラザーズの一員で伝説的ベーシストの「James Jamerson(ジェームス・ジェマーソン)」が弾いていると思われがちだが、実際には先の“Inner City Blues”をはじめ、“What’s Going On”と“Mercy Mercy Me”と言う、ソウル・ミュージックの大傑作2曲とも「Bob Babbitt(ボブ・バビット)」によるものである…。

 
70年代前半に「ニューソウル」の勃興、そして「ソウル・ミュージックの革新」を牽引したこのアルバム『What’s Going On』の中でも最高の曲である“Mercy Mercy Me (The Ecology)”では、ピアノを弾くMarvin Gaye、Paul RiserとDavid Van De Pitteが指揮する弦楽器、GayeとThe Andantesのマルチトラックヴォーカル、「The Funk Brothers」が提供する複数のバックグラウンド楽器、そしてWild Billのサックスソロなど、非常に短く単純ながらも最高に華麗なるこの曲は、単独で聴いては魅力が伝わらない ‼

 


【 The Funk Brothers(ファンク・ブラザーズ) 】

The Funk Brothers(ファンク・ブラザーズ)とは、1959年-1972年のモータウンレコードにおいて活躍したデトロイトを拠点としたバックミュージシャンのニックネームで、音楽史上、最も成功したミュージシャンとみなされている。

モータウンでは、シュープリームズ、テンプテーションズ、フォー・トップス、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ、マーヴェレッツ、マーサ&ヴァンデラス、マーヴィン・ゲイ、スティービー・ワンダーという蒼々たるスターの人たちがヒット曲を出し、当時バックの演奏者の名前は出てくることはありませんでした。その人たちは通称「ファンク・ブラザーズ」と呼ばれている。スタックスでは、バックのブッカー・T&ザ・MGズが自らヒット曲を出していたのと比べ、モータウンでは商品としてのスターやそれを支えるプロデューサーとミュージシャン達とは扱いが明確に区別されていた。

2002年、モータウンを支えた影の力として一部のR&Bファンには知られた存在であった彼らにスポットをあてた『モータウン創立45周年ドキュメンタリー映画「永遠のモータウン(Standing in the Shadows of Motown)」』では、彼らの功績がアラン・スラツキーの原作に基づき、ポール・ジャストマン監督によって丁寧描かれた。

この映画のオープニングで、ファンクブ・ラザースは、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ローリングストーンズ、ビーチボーイズのヒット曲を合計した数より多くのNo1ヒットを世に送り出したと述べられ、その結果、一躍この映画は数々の賞を受け、この功績が評価された彼ら自身も2004年にグラミー賞の功労賞を受賞した。

モータウンレコードでファンク・ブラザーズがヒットさせた曲は、“My Girl”、“I Heard It Through the Grapevine”、“Baby Love”、“Signed, Sealed, Delivered I’m Yours”、“Papa Was a Rollin’Stone”、“The Tears of a Clown”、“Ain’t No Mountain High Enough”、“(Love Is Like a) Heat Wave”などがある。

そして、彼らを世界的なミュージシャンとして押し上げた曲こそ、70’sニューソウルの旗手として進化を遂げた「マーヴィン・ゲイ」の名作“What’s Going On”である…。

【 ファンク・ブラザーズの代表的メンバー 】

[ Bassist ]
・ジェームズ・ジェマーソン : James Jamerson (1959–1972)
・ボブ・バビット : Bob Babbitt (1937–2012)

[ Keybord ]
・ジョニー・グリフィス : Johnny Griffith (1963–1972)
・ジョー・ハンター : Joe Hunter (1927–2007)/Band Leader
・アール・ヴァン・ダイク : Earl‘Chunk of Funk’Van Dyke (1964–1972)/Band Leader

[ Drummer ]
・ベニー・パパ・ジータ・ベンジャミン : Benny‘Papa Zita’Benjamin
・リチャード・ピストル・アレン : Richard‘Pistol’Allen (1932–2002)
・ユーリル・ジョーンズ : Uriel Jones (1934–2009)/Purcussion
・ジャック・アシュフォード : Jack‘Black Jack’Ashford (1959–1972)/Tambaurin and Bibes
・エディー・ボンゴ・ブラウン : Eddie‘Bongo’Brown (1932–1984)

[ Guitarist ]
・ロバート・ホワイト : Robert White
・ジョー・メッシーナ : Joe Messina (1928 – )
・エディー・チャンク・ウィルス : Eddie‘Chank’Willis (1936 – )

 
つまり、この曲はその前の2曲、“Save The Children”と“God Is Love”があるからこそ最高にかがやく‼

そして、90年代半ばの「ネオ・ソウル」にも同じような匂いがあり、70年代前半に「ニューソウル」としてマーヴィンらが築いた精神性は現在の黒人音楽界の中でも息づいている。

それらを代表する「D’Angelo(ディアンジェロ)」をはじめ、女性では「Erykah Badu(エリカ・バドゥ)」のデビュー・アルバム『Baduizm(1997年)』、そしてソウルクエリアンズのクウェストラヴ、J・ディラ、ジェームス・ポイザーらがプロデューサーとして参加し、結果、ディアンジェロの2ndアルバム『Voodoo(2000年)』と並ぶネオ・ソウルの最高傑作に数えられる2ndアルバム『Mama’s Gun(2000年)』でも、アルバムの流れとして曲が構成されている…。

それでは、マーヴィン・ゲイが初めて全曲プロデュースした、1971年の最高傑作『What’s Going On』から、“Save The Children”、“God Is Love”、そして“Mercy Mercy Me”への素晴らしい曲の流れをまずはお聴き頂きたい…❣

by JELLYE ISHIDA.



[ 連載 ‼ Marvin Lover. ]

 VOL.1:Inner City Blues/インナーシティ・ブルース(都市のブルース)

 VOL.2:お蔵入りしたマーヴィン・ゲイの名曲『You’re The Man』

 VOL.3:マーヴィン・ゲイの『トーン(声)を自由自在に操る才能』

 VOL.4:ビルボード誌の集計においてマーヴィン・ゲイ最大のヒット曲 “ I Heard It Through the Grapevine ”(邦題:悲しいうわさ)/ Single Cover,1968

 VOL.5:Live At Oakland Coliseum, CA 1974

 VOL.6:単独で聴いては魅力が伝わらない ‼ 華麗なる曲『Mercy Mercy Me (The Ecology)』


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