黄金の吐息、クール・ディーヴァ『シャーデー・アデュー』／『シャーデー・アデュー』の２１世紀：VOL.3

2017年4月25日

ブルーノートといえば、ジャズの名門レーベルだが、このところのヒップホップやR&B（特にネオ・ソウル）等、非ジャズ系のブラック・ミュージックを愛するリスナーも大いに注目すべき一大拠点となっている。ミュージシャンたちは音...

2017年6月2日

「もしあなたが、今、ここで、実際に、全宇宙のすべてのもの、すべての事象を完全な美の対象と観ることができれば、あなたは自我を解体させ、その代わりにスピリットとして立っている。もしあなたが宇宙のすべてにひとしく輝くような美を認めれ...

1980年代中盤に彗星のごとく音楽シーンに登場し、ジャジーでソウルフルな欧州発エレガント・ポップ・ブームの先鞭をつけたクールネス・ディーヴァ「シャーデー」。それまでの全世界の景色を変えてしまったといっても過言ではない。

クールでありながらもその歌は常に愛と情熱に満ち、「スムース・オペレーター」「パラダイス」「キス・オブ・ライフ」「バイ・ユア・サイド」他数多くのヒット曲で世界中の音楽ファンを魅了し、アルバム総セールスは5000万枚以上にも及んだ。

寡作で知られるシャーデーが、2000年に発売された5枚目のアルバム「Lovers Rock（ラバーズ・ロック）」から10年後の2010年に発表したのが、現在最終アルバム『Soldier Of Love／ソルジャー・オブ・ラヴ（直訳：愛の戦士）』である。

6枚目のアルバム『Soldier Of Love（ソルジャー・オブ・ラヴ）』

このアルバムは、トレードマークであるスムーズ且つ魅惑的なメロディーは勿論、タイトルにも明らかな、シャーデーの変わらぬ情熱的な愛のメッセージが詰まっている。また、現代的なビートを纏って新たな魅力も振りまいているが、基本的には不変の音楽性を保ちつつ、ブルージーでメランコリックなトーンの楽曲が中心となった時代を映し出した一枚でもある。

「何か言いたいことがある時にしかアルバムを作らない」と断言する、そんなマイ・ペースでアルバムをリリースしているシャーデーの声に飢えていたファンにとって、この6枚目のアルバムは待望のニュー・アルバムであった。そして、世界中で好セールスを記録（ＵＳ４位、ＵＫ等４カ国で１位）し、グラミーも受賞している。

翌年の2011年には、新録を含む全２９曲入りの２枚組ベストアルバム「Ultimate Collection（アルティメイト・コレクション）」をリリースし、ドレイクやカニエ・ウェストから次々と共演のラブコールを受けながらも、「自分の安全圏から出て作品を作ることは避けたい」と言っていたシャーデーが、何故かラップ界の大御所ジェイ・Ｚを迎え「ザ・ムーン・アンド・ザ・スカイ」（「ソルジャー・オブ・ラヴ」１曲目）をリミックスしている。